コミュニケーションスキルを磨き、トレーダーとして開花
「人からは器用そうにみられますが、自分自身は不器用だと思っています。あれもこれも無難にこなして、ということはできない。目の前にある業務に全力で取り組む。常にそのような感じで仕事に向き合ってきました」。そう話す大久保は、トレーディング部門、管理部門、システム部門という、役割が異なる3つの部門を経験してきた。冒頭の言葉とは反対に、複数部署を兼務してきた社内でも珍しい経歴の持ち主だが、一つひとつの仕事に全力投球してきたことが大久保に複数の活躍する場を与え、厚い信頼を得ることに繋がったといえる。当社におけるキャリアストーリーの一例として、その足跡を紹介しよう。
大久保は入社後まず、事業の基幹にあたるトレーディング部門に配属され、そこで8年間、トレーダーとして第一線で働いた。学生時代に株式に興味を持ち、金融の最前線で働きたいと考えていた大久保にとって、トレーダーは希望通りの職種だった。
「配属後は、とにかく無我夢中でトレーディング業務に取り組んでいたように記憶しています」。上司や先輩にいろいろと面倒を見てもらいながら、業務面では必死になって周りについていったという。
「トレーダーが市場に対しどのように向き合うかは、人によって様々。蓄えた金融知識の面からマーケットを洞察し売買に反映させるトレーダーもいるし、顧客である証券会社のディーラーとのリレーションシップ深化に軸足を置くトレーダーもいます。私の場合は後者でした」。こまめな情報提供や人間関係づくりに力を入れ、ヒューマンコミュニケーションスキルを磨き続けた。結果、いつしか担当ディーラーの声色一つで、どの程度のレート水準で、どの程度の数量を売買したいと考えているのか推し量れるようになっていた。顧客からすれば、自分の考えを先取りしてくれるトレーダーは、とても頼りになる存在。入社6年目には大手の顧客を任されるまでになった。
「もう1人のトレーダーとペアを組んで大手顧客を担当し、矢継ぎ早に発注される注文をなんとかこなしていました」。証券会社の規模が大きくなると、発注金額も巨大になる。1,000億円を超える大商いも経験した。「毎日緊張の連続でしたが、大きな商いができることにやりがいも感じていました」と、当時を振り返る。